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論文の構造と種類

研究が一段落して、いざ論文を書こうとすると、最初にぶつかるのは「どういう順番で書くのか」という問いです。 やったことを時系列に並べればいいのか。 面白かった発見から書き始めればいいのか。 どちらも自然な発想ですが、どちらで書いても読んでもらえません。

論文には決まった型があります。 その型は誰かが趣味で決めたものではなく、読者が論文をどう読むかから逆算してできあがったものです。 査読者は、方法が妥当かを確かめたいときにメソッドの節を開きます。 先行研究との違いを知りたいときは、イントロダクションの後半を探します。 どの論文でも同じ場所に同じ種類の情報がある――この約束があるから、専門家は一本の論文を数十分で評価できるし、何十本もの論文を突き合わせて分野の状況を把握できます。

型を知らずに書くと、どうなるか。 情報は全部書いてあるのに、読者が探す場所にない論文ができます。 査読で「方法が不明確だ」と言われて読み返してみると、方法の話は考察のなかに紛れ込んでいた――こういうことが起こる。 書いた本人には全部書いたように見えるので、この種の指摘はなかなか腑に落ちません。 型は、書き手の自由を縛るものというより、書いた内容が読者に届くかどうかを決める部分です。

もう一つ、型を覚えておく実利があります。 毎回ゼロから構成を考えなくて済む、ということです。 書くこと自体が十分に難しい作業なので、構成という問題を型に任せられるのは、実際にはかなり大きい。 慣れてくると、データが出た時点で「この結果は結果の節のどこに置くか」が自然に決まるようになります。

ただし、型は一種類ではありません。 同じIMRADでも、30ページのジャーナル論文と6ページの会議論文とでは、どこを厚く書くかがまるで違います。 自分の研究をどの場に出すのかによって、型の使い方が変わる――だからこの章では、骨格の話と、出す場の話を続けて扱います。

そして型は、書くときだけのものではありません。 研究を始める段階で「完成した論文はどういう形になるか」を思い描けると、いま何を優先すべきかが見えてきます。 この使い方は次章の 論文から逆算する研究設計 で扱いますが、その前提として、ここで型そのものに慣れておいてください。

この章で扱うこと

各セクションの具体的な書き方――イントロダクション、結果、考察――は、第6部に章を分けて置いてあります。 投稿先の選び方や投稿の手続きといった実務は、第7部の 論文投稿プロセス にあります。