研究するということ
研究室に入ったばかりの頃、多くの人は期待と漠然とした不安を同時に抱えています。「研究って、結局のところ何をすることなのだろう」「自分にできるのだろうか」――そういう問いを抱いたことのある人は少なくないはずです。あなたも、もしかすると今まさに研究の入り口に立っているかもしれません。
「研究」と聞いて思い浮かぶのは、実験、データ分析、論文執筆、プレゼンテーションといった具体的な作業かもしれません。けれどもそれらはあくまで表層で、研究の核心はもっと根源的なところにあります。僕は研究を、ひとことで言えば 問いを立て、それに応答する営み だと考えています。問いがあるからこそ実験や分析に意味が生まれ、文章にする値打ちが生まれる。順序が逆ではありません。
そしてその応答は、ひとりで完結するものではありません。研究は孤独な自己満足ではなく、論文、学会、議論、査読といった場を通じて他者と知を磨き合う共同の営みです。既存の知識を受け継ぎ、問い直し、新たに構築し直す――創造と再構築を往復しながら、研究者は世界の見方を少しずつ更新していきます。その最も深いレベルで何が起きているのかは、知を生み出すということで書きました。
この章では、その営みの基礎にある二つの側面を見ていきます。
- 問いを立てることの意味 ― 良い問いはどこから生まれ、どう育つのか
- 未知に向き合う態度 ― わからなさを恥じず、出発点として引き受ける姿勢
入り口として、まずは「問い」から考えていきましょう。